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「実刑・執行猶予・罰金・前科等」に関するお役立ち情報
前科と前歴の違い
1 前科と前歴の違い
前科は、よく耳にするかと思いますが、前歴は、一般的にはあまり聞きなれない言葉ではないでしょうか。
簡単に言えば、前科とは逮捕されて有罪判決を受けた場合につくもので、前歴とは逮捕されて起訴されなかった場合につくものです。
2 前科とは
前科とは、罪を犯して刑事裁判となった結果、裁判所から有罪判決が下された事実のことを指します。
3 前科がつく場合
警察に逮捕されて、検察官に起訴されたあと、裁判所から有罪判決を下されたケースでつきます。
刑罰の種類にかかわらず、執行猶予付判決であっても、前科はつきます。
また、スピード違反などの罰金刑であっても、前科がつきます。
一般的に、前科がつく場合のイメージとしては、通常の裁判にて拘禁刑などの実刑判決を受けたときにつく、と想像されるかもしれませんが、実はこのケースだけに限られません。
通常の裁判は行わず、簡単な書面審理で終わらせる“略式手続”で罰金刑を受けただけにとどまるケースでも、前科がついてしまいます。
4 前歴とは
前歴とは、警察や検察など捜査機関によって、被疑者として捜査対象になったものの、最終的に不起訴処分となった事実を指します。
前科と違い、起訴されていない場合や、有罪判決が下されていない場合であっても前歴はつきます。
5 前歴がつく場合
上でも述べましたが、前歴は捜査機関に逮捕されたのち、不起訴処分となった場合につきます。
もし、起訴処分となれば前歴ではなく、前科がつくことになります。
通常、逮捕されてから検察庁に送致された被疑者を起訴するかについて、検察官が判断します。
もし、検察官が起訴しない、つまり不起訴処分と判断した場合、前科がつくことを回避できます。
では、どのような場合に「起訴しない」「不起訴処分」と検察官は判断するのでしょうか。
6 不起訴となる3つの理由
⑴ 嫌疑なし
捜査した結果、被疑者に対する犯罪の疑いがない、要するに無罪であると判断した場合です。
例えば、新たに真犯人が判明した場合や、実は被疑者の行為が犯罪に該当しなかった場合などです。
⑵ 嫌疑不十分
捜査した結果、罪を犯した可能性はあるけれども、それを立証するだけの証拠が十分にそろえられなかった場合です。
⑶ 起訴猶予
捜査した結果、有罪を証明することが可能であっても、検察官の判断で不起訴とした場合です。
検察官は、犯罪被害の軽重、被疑者の境遇、被害弁償や示談成立などの犯罪後の状況を考慮して、そのような判断を下す場合があります。
なお、不起訴以外にも、前歴がつく場合があります。
微罪処分とされた場合です。
微罪処分とは、警察が極めて軽い犯罪であると判断した場合、検察に送致されることなく、刑事手続きが警察段階で終了となり、被疑者が釈放される処分のことです。
このように、”逮捕されたけれども起訴されなかった”もしくは”微罪処分となった”場合には、前歴がつきます。
一方、起訴されてしまった場合には、前科がつくことになります。
7 前科・前歴はどこに保管されるのか
⑴ 警察や検察などの捜査機関
前科・前歴ともに、捜査機関のデータベースに記録されます。
再犯防止や事件解決のために利用され、該当者が死亡するまでその記録は残ります。
⑵ 本籍地の市区町村
前科・前歴ともに、本籍地の市区町村のデータベースに記録されます。
ただし、全ての前科が記録されるわけではなく、交通前科をのぞく罰金刑以上の前科が記録対象となります。
ただし、これらの情報は、捜査機関や市区町村内で、重要機密情報として厳重に保管されており、外部に漏れる心配はないといえます。
8 前科・前歴がつくことによる日常生活への影響は?
⑴ 就職活動
一般企業が、前科・前歴を捜査機関に照合して確認することはできません。
ただし、就職面接などで、「前科や前歴の過去はありますか?」と問われたとき、あるにもかかわらず「ありません」と回答した場合、経歴詐称になるリスクがあります。
重い経歴詐称であると判断された場合、内定取り消しなどの不利益を被る可能性もあります。
また、インターネットにより、採用担当者が過去の記事を検索することで、前科・前歴の過去が発覚してしまうこともありえます。
もし、そういったおそれがあれば、サイト管理者に対する削除請求依頼などを検討することをおすすめします。
⑵ 履歴書への記載
賞罰欄が設けられている履歴書に記載する必要は、必ずしもありません。
ただ、面接などで聞かれた場合に、虚偽の申告をすると、前記のとおり、経歴詐称リスクが生じますので十分ご注意ください。
⑶ 仕事
前科がつくことで制限されてしまう、資格や職業があります。
【”拘禁刑”以上の前科の場合、資格制限される主な職業】
・国家公務員
・地方公務員
・警備業者と警備員
・建築士・建築業者
・宅地建物取引業者
・不動産鑑定士
・教師
・教育委員会の委員
・保育士
・社会福祉士と介護福祉士
・貸金業者
・司法書士
・行政書士
・弁護士
・裁判官
・検察官
・自衛隊員
・質屋
・古物商
・公認会計士
・旅客自動車運送事業者
・中央競馬の調教師とジョッキー etc
【”罰金刑”以上の前科の場合、資格制限される可能性がある主な職業】
・医者
・歯科医
・薬剤師
・看護師と准看護師
・助産師と保健師
・柔道整復師 etc
⑷ 離婚
前科・前歴を理由に、一方的に相手方から離婚請求を受けた場合、成立することはありえるのでしょうか?
回答としては、前科・前歴がついたからといって、必ずしも離婚成立となるわけではありません。
民法770条1項に、相手方の合意なしに一方的に離婚を成立させることができる離婚事由が記載されています。
そこにある「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という項目に、「前科・前歴をつけられたこと」が該当する場合のみ、離婚成立の可能性があるといえます。
⑸ ローンを組めるのか?
前科・前歴があることを理由にローンが組めない、ということはありません。
基本的にローン審査が通らないのは、信用情報機関に登録されている、いわゆる”ブラックリスト状態”であることが、その理由です。
ブラックリスト状態とは、長期にわたって借金の返済が滞っている状態のことを指します。
したがって、長期間、刑務所に収容されていたことで、ずっと支払いが滞っていた場合などは、そのことが原因でローンが組めないリスクはあります。
⑹ 海外渡航
海外旅行も自由に行えます。
前科・前歴があってもパスポート取得を制限されることはありません。
ただし、渡航先の国によっては、前科があることが入国の障害になることもあるため、事前に確認しておくべきでしょう。
例えば、アメリカへ観光目的で渡航する際には、有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方は、事前にビザを取得しなければアメリカへ入国できません。
⑺ 年金・生活保護の受給は?
前科・前歴があっても、年金や生活保護の受給が制限されることはありません。
⑻ 帰化申請・永住権の申請
素行が善良であることが要件としてあるため、前科があることで、帰化申請・永住権の申請が困難になる可能性があります。
⑼ 選挙権・被選挙権の喪失(公民権停止)
公職選挙法は、過去に犯罪を犯した一定の者について、選挙権及び被選挙権を喪失すると規定しています。
前科・前歴がついてしまうのではとお悩みの方は弁護士に相談
以上のとおり、前科・前歴がつくことで、日常生活に大きな影響が生じる可能性は低いといえます。
しかし、前科・前歴がつくことを回避できるのであれば、その方が賢明です。
前科・前歴がついてしまうのではないか?とお悩みの場合は、手遅れになる前に弁護士へご相談ください。
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